東南アジア漁業開発センター養殖部局(SEAFDEC/AQD)の概要

私が大学時代に養殖を学ぶインターンとして行ったフィリピンにあるSEAFDEC/AQDについて少しでも多くの方に知ってもらえたらという気持ちも込めてご紹介します。

ちなみに当時は全然あまり情報が無くて、特に日本語で書かれたものはほとんどなかったので情報収集に苦労しました。そんな苦労をしなくてもいいように概要だけでも誰かのためになればと記します。

SEAFDECとは

SEAFDECは東南アジア漁業開発センター(Southeast Asian Fisheries Development Center)の略称で東南アジア地域における漁業開発の促進に貢献することを目的として1967年12月28日に設立された地域協力国際機関です。

SEAFDECの加盟国

• ブルネイ
• カンボジア
• インドネシア
• ラオス
• マレーシア
• ミャンマー
• フィリピン
• シンガポール
• タイ
• ベトナム
• 日本
つまり、ASEAN諸国連合+日本です。

SEAFDECの組織

• 事務局(タイ):SEAFDECの対外窓口
• 訓練部局(タイ):漁業技術者の訓練
• 調査部局(シンガポール):水産加工技術の開発・普及
• 海洋資源開発管理部局(マレーシア):漁業資源の調査
• 養殖部局(フィリピン):養殖技術の研究と普及

AQD「養殖部局(Aquaculture Department)」とは

水産養殖分野の研究開発を進める国際機関が東南アジア漁業開発センター養殖部局(SEAFDEC/AQD)です。

現状日本ではSEAFDEC/AQDの認知度が低く私の周りにも知っている人はほとんどいませんでした。

どこにあるの?

SEAFDEC/AQDはフィリピン中部パナイ島イロイロ市郊外ティグバワンに本部があります。フィリピンギマラス島にあるイガン海水魚養殖場やサンホアキンにある海洋保護区などの施設もあります。

本部やイガン海水支所には生活施設もあり一軒家やアパートもあり、私は当時一泊600円ほどで本部の施設に泊まっていました。クーラーや洗濯機もありで室内も広く快適でした。カフェテリアなどもあり食事の多くはそこで取っていました。たしか1食200円ほどでした。瓶のマウンテンデューがめちゃめちゃ美味しくて毎日飲んでいましたね。

総敷地面積40ha(東京ドーム約8.5個分)もあるそうです。

どんなことをしている

  • 種苗生産に関する調査研究および魚介類の養殖技術開発
  • 養殖技術の実用化検証
  • 専門家の訓練(研修を通して水産増養殖に関わる人材育成)
  • 養殖に関する知識および情報の交換と普及
  • 漁業者や養殖業者への技術移転とその後の問題点の改善

AQDの繋がり

フィリピンの様々な大学、水産学校、政府機関と密接に連携。海外の研究機関や国際機関とも強い結びつきがあります。ODAの関係で日本とも強い結びつきがあります。

AQDの組織

AQDは大きく4つの部(Division)と、その下のいくつかの課(Section)によって構成される。

  • 研究部
  • 成熟産卵課
  • 養殖システム環境課
  • 飼料開発課
  • 病理課
  • 社会経済課
  • 技術検証実証部
  • 技術検証課
  • 実証課
  • 研修課
  • イガン海水支所
  • ドゥマンガス汽水支所
  • 研修情報部
  • コミュニケーション開発課
  • 図書館・データバンク
  • フィッシュワールド(博物館)
  • 財務部
  • 経理課
  • 予算会計課
  • ヒューマンリソース管理課
  • 工学管理課
  • 資料管理課

職員について

  • 職員は正職員、任期雇用職員、臨時雇い(パート)に分けられる。
  • 職員には科学者や研究者、技術者、助手など専門的に分けられる。
  • 日本の水産庁や研究機関から出向している日本人(当時は次長と研究員のかた2名のみ)もいた。

AQD本部内の各調査活動施設の概要

各施設とも、種苗生産、養殖、調査研究のために生物を飼育している。

  • 甲殻類孵化場 (Crustacean hatchery)
  • 天然餌料孵化場 (Natural food laboratory)
  • アワビ孵化場 (Abalone hatchery)
  • 海産魚孵化場 (Marine fish hatchery)
  • ハナジナマコ孵化場 (Sandfish hatchery)

アワビ孵化場 (Abalone Hatchery)

対象種
• 和名: ミミガイ
• 英名: Donkey’s Ear Abalone
• 学名: Haliotis asinina
主な輸出国
• 台湾
• 日本
• シンガポール
• 韓国
特徴
• 成長が早く、一年で市場サイズに成長(最長5〜8cm)
• ミミガイの餌であるグラシラリア(Gracilaria sp)を同時に培養

アワビの種苗生産と養殖についてマンツーマンで教えていただきました。この時に初めてアワビの雌雄の違いが明確になったことを思い出しました。

海産魚孵化場 (Marine Fish Hatchery)


• アカマダラハタ
• チャイロマルハタ
• サバヒー
• ゴマアイゴ
• マルコバン など
餌と培養
• アルテミア (Artemia nauplii)
• ワムシ (Brachionus sp)
• クロレラ (Chlorella sp)

イガン海水支所の概要


• ティグバウアン本部から60kmほど離れた海の上にあります。この時初めて海上での生活を体験しました。
• ハタ、マルコバン、タツノオトシゴ、ハネジナマコ、タマカイ、ゴマフエダイ、オオシャコガイ、サバヒーなど商業上重要な種の飼育生産を行う。
• 研究とトレーニング活動を支援するための事務所と宿舎が完備。

最後に

AQDは初めての海外ということもあり、日本人も少なくとても不安でしたが現地の方々はとても優しく色々と教えてくださいました。今でも少なからず交流があったりと本当にいい経験で人生観が変わった大きな転機となりました。

まだまだ日本では知られていないことも多く、ここに書いてある情報も最新ではないかもしれませんが少しでも興味を持ってもらえたらいいなと思っています。

今でもトレーニングとして受け入れなどしているので養殖を学びたい学生さんなども留学先の一つとして考えてもいいかもしれません。

フィリピンは公用語が英語などでコミュニケーションが取りやすく、物価も日本に比べやすいのもメリットです。

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